

湖東地方で、近江八幡とともに、伝統的建造物群保存地区に指定されている五個荘の金堂地区の街並み。足を踏み入れた瞬間、静謐さに包まれた和の世界が眼前に広がる。最近は隠れた観光名所として訪れる人も増えているようだが、できればこのまま静かな佇まいのままでいてほしいと願うばかり。


古く奈良時代にまでさかのぼる農村集落であるが、中世以後、近江商人たちの台頭とともに空間の農工分離が進み、近江商人の数奇屋建築が農村と共存しつつ建てられてきたという経緯があり、京都のような町屋の街並みとは異なる気配がある。藤井彦四郎邸、中江準五郎邸、外村宇兵衛邸など、池や築山を配した大きい日本庭園を持つ、当時をしのばせる商人屋敷が、旅人を受け入れてくれる(はずだったが、私は日没時間切れタイムアウト。残念)。


金堂の町割りは、条里制地割を基礎として、集落の中心に陣屋(現存せず)、その三方に寺院(弘誓寺、勝徳寺、安福寺)が配置され、周辺に農家が集まり、東側には大城神社が鎮座し、その外側に条里制水田の景観が広がっている。現在も集落内は当時の地割を残しており、軽自動車の通行がやっとの路地が入り組んでいる。もともと水はけの悪い地域で、農作に困難が多かったことから、お上も農民の商業への進出を容認していたということも、近江商人活躍の一因だったという。明治13年には、全戸数の3分の1にあたる67軒が、呉服などの商いに従事し、うち13軒は県外に出店を持っていたというから驚きである。



町内には路地に沿って掘割がめぐらされ、瓦屋根や板塀の連なりが水面でゆらゆら揺れている。弘誓寺の前の掘割には、色鮮やかな鯉が悠然と泳いでいた。塀の柱材と貫に塗られた紅色と不思議に調和して見える。

周囲に連なる家並みは、船板張り(写真)のテクスチャーが実に味わい深い。
滋賀県東近江市五個荘金堂町

行政上は東近江市であるが、交通上は彦根と近江八幡の間に位置している。鉄道では、近江鉄道本線の五個荘駅下車。国道8号線の五個荘南の交差点を曲がり、道なりに5分ほど走ると、やがて観光案内所が見えてくる。クルマを停めて歩き始めると、金堂の街並みはすぐそこ。中央にそびえて見える伽藍は弘誓寺で、金堂の街並みのほぼ中央部である。
| ホーム |

