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廃市

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学生の頃、一時はまっていた福永武彦の同名小説を映画化したもので、1984年の作品です。
tsutayaで見つけて懐かしくなり、早速レンタルしてきました。
小説も味わいがありますが、全編16ミリで撮影されたというこの映画も、実にナチュラルで古典的で、小説と同様に味わいがあります。

ある初夏の日、九州の田舎町のローカル線の駅に、一人の若者が古びたスーツケースをもって下り立ちます。
彼の名は江口。大学で英文学を学ぶ彼は卒業論文を作成するため、この夏を水郷の町で過ごすことになったのでした。街には掘割が縦横に張り巡らされ、人々は小船で町を行き来していました。
親戚から紹介されたという旧家、貝原家に着くと、快活な娘の安江が何かと面倒を見てくれます。
でも、昔の庄屋を思わせる大きい屋敷に、安江と祖母の二人と、お手伝いさんだけ。
聞けば、母は安江が7歳のときに死んだ、とか。
最初の夜、彼は川面のせせらぐ音の中に、かすかに悲しげな女の泣き声を聞きます。
その後、彼の耳の奥には、この最初の晩のすすり泣きがずっと消えずにいました。
その泣き声の意味を模索するうち、この家の複雑な人間模様が少しずつあきらかになっていきます。
そして、物語は意外な方向へ。
卒論を仕上げた彼は、複雑な思いを胸に、一夏を過ごした想い出の家を静かに去っていくのでした。

監督 大林宜彦
出演 小林聡美、根岸季衣、尾美としのり、峰岸徹

そして、映画の舞台となった、九州柳川の風景です (柳川市ウェブサイトより)

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柳川といえば、千葉の佐原と並び、水郷として有名ですよね。

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しかし、柳川生まれの詩人、北原白秋は「おもひで」の中で、柳川をこんな風に称しています。
『さながら水に浮いた灰色の棺である』
驚くほどに、暗いイメージで、ちょっとびっくりです。
もちろん、それは白秋が詩人だからであって、柳川に暮らす人たちがそんな風に思っているとはとても思えないけれど。

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詩人の目には、水面をたゆたう小船が、あの世へと旅立っていく棺のように映った、のでしょうか。
映画の中で、安江は「この街は死んでいます」とつぶやく。
都会から来たよそ者には理解できないのかもしれないけれど。
堀割を流れるゆったりと淀んだ水の流れに時間の流れがシンクロし、退廃と倦怠が支配する世界。
そこに生まれ、育ち、そして老いていく者にとっては、何かにつけては集まって酒を飲み、謡に興ずる以外、何も楽しみがない。
祖母の十三回忌での宴、夏祭りの歌舞伎などを通して、今はなき峰岸徹演じる義兄、貝原直之が、そんな退廃的な雰囲気を実にリアルに醸しだしていました。
江口がつぶやいた「つまり、芸術的なんですね」の言葉に対して見せた彼の、言葉にできない表情が、この映画のすべてを物語っているのかな、という感じがしました。

それと、小林聡美さん、昔はこんな髪形だったんですね(笑)
髪形以外は、昔も今も変わらないなぁ (これって褒め言葉になってるのかどうか?)
2年くらい前、柳川を訪れたことがあります。
時間がなく、じっくり散策することはできませんでしたが。

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映画で見て脳裏に植えつけられた光景と、実際に現地を訪れて目にする風景は、だいたいにおいて、イメージがかみあわないことが多いようです。
「あれ、こんな風だったっけ?」
一度見ただけの映画の中の風景を、頭の中で勝手にふくらませていくわけだから。
それに、写真にしろスクリーンにしろ四角く切り取られた、周囲と隔絶した世界なのであって。
だから、一致しなくて当たり前なんですね。
わかっちゃいるけど、でも、心の中に焼きついている風景を探そうと、必死に歩き回ったりします。

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こんな洋館もありました。地元の商家の迎賓館として建てられたもので、美しく維持されています。

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こちらが北原白秋の生家です。

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せっかく柳川を訪れるのでしたら、ぜひ、船に乗って水面から街を見てみたいですね。
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テーマ : 昔の映画
ジャンル : 映画

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No title

ここ最近は自分のブログもろくに見れない感じでした。
3月の記事は3本かぁ、少ないなあ。

achikochiさん、こんばんは。
柳川はほんとに駆け足で通過しただけだったんですよ。
行く機会がありましたら、ぜひ、船に乗って、ゆらりゆらりと街並みを見てきてくださいね。観光地化したエリアじゃなく、生活圏のほうが絶対面白いと思うのですが、そういうところに行ってくれる船頭さんがいるかなあ。

inutaroさん、お久しぶりです。
ご出張が多くて、うらやましいです。最近はずっと机にかじりつき。別にガリ勉してるわけじゃないけど(笑)
inutaroさんの写真は、ただ撮っているだけじゃなくて、写真を撮る以前の着眼点のところが実に読みが深いというか、いつもすごいなあと思います。同じ地点を撮っていても、どこか違う感じがします。あとで見に行きますね。

ありがとうございましたー。

こんにちは

きれいな写真ですね。
柳川の掘割にはやはり柳なのですね。舟から眺める街並は情緒があるでしょうね。
柳川は意外に大きい町のようでびっくりしました。洋館もあるなんて。映画や文学のイメージと実際の風景とが異なることはよくありますが、新たな発見があることも旅の楽しみですね。

記事とはかんけいありませんが

デジタル日記にコメントありがとうございます。
先日、週末に東京出張、週明けに栃木・福島出張という状況になりました。
土日は京都に帰らず、東京近郊を訪ねようということで、
fabio777さんのブログを参考に、千葉の佐原に行ってきました。
役立てさせていただいて、どうもありがとうございます。

そのときの写真は別ブログにアップしています。
fabio777さんの写真とはまったく傾向が違います。
遅ればせながらお礼まで。

http://photoesonly.seesaa.net/archives/20090320-1.html

No title

管理人です。
ひとつ追加しますと、作家の池澤夏樹さんは、何を隠そう、福永武彦さんのご子息だったですね。そういえば、たしかに、やわらかい文体がどことなく似ているというか、人の心のひだに自然にしみこんでくるところなど、とても共通性があるように思います。
やはり、蛙の子は蛙、なのでしょうか。
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古民家での晴耕雨読な暮らしに憧れる軟弱な熊谷都民。

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