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大雪山系での大量遭難について想うこと

20090721-00000019-maip-soci-view-000_convert_20090721230457.jpg 写真:毎日新聞

まずは、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。合掌。

さて、連日のように、大量遭難事故として新聞・テレビで報道されています。こういう事故が起きると、マスコミさんたちは、ここぞとばかり、連日のように記者会見を要求し、いかにずさんな計画だったかを根掘り葉掘り聞き出し、暴露したがるようです。それで亡くなった方が少しでも浮かばれればいいけれど、そうも思えません。山登りのはしくれとして、黙ってみているだけでいいのかな、と思っているのですが。。。

まず、トムラウシ山がどんな山か、わたし自身、あまりよく知りません。だいたい、本州以南の人間でヒグマ覚悟で北海道の山に登るというのは、例の百名山ハンターか、もしくは本州とは異なる植生や景観を見せる北海道の山の魅力に取り付かれたか、いずれかでしょう。でも、北海道の山が本州の山といかに異なるものであるかということくらい、たとえ北海道の山の経験がなくたって、多少の山の経験があれば推測できるのではないかと思います。

まず、トムラウシ山がどういう山か、見てみましょう。
非常に遠いがゆえに神秘的な謎めいた山というイメージがあるようです。
アプローチが長いことは、体力的に負荷がかかることを意味します。登山口のとば口であるトムラウシ温泉まで、特急の停車する新得町から入りますが、新得町からトムラウシ温泉までがクルマで30km近くの道のりです。さらにクルマで20分かけて、やっとのことで短縮登山口に到着です。

以後、標準ルートは次の通りです(所要時間は登りのタイム)。北海道の登山ガイドブックを持っていないので、ネットで調べたものです。

短縮登山口→(20分)→温泉分岐→(1時間10分)→カムイ天上→(2時間20分)→前トム平→(2時間)→トムラウシ分岐→(30分)→トムラウシ山頂(2141m)

1-006-tomu_convert_20090721225845.jpg
http://yamachizu.mapple.net/mt01-0006/

普通に登っても片道4~5時間のコースです。途中は沢を上り下りするなど、一般登山道の整備が十分ではない箇所もあるようです。晴れれば展望が素晴らしいのはもちろんですが、その分、テン場はトムラウシ分岐の南沼付近に限定されています。登った道を引き返すピストンが望ましいと書かれています。それでも、登って下りるだけでも、行程としてはけっこうしんどそうです。

route_convert_20090721231529.jpg
今回のツアーの行程

ガイドブックがないので、どんなコースかわかりかねるのですが、これだけのコースを山中2泊で踏破するわけです。しかも、きちんとした山小屋ではなく、雨露をしのげる程度の避難小屋に二泊です。18人のパーティでは、先客がいようものなら、さぞ窮屈だったでしょう。加えて、アプローチが長いため、残りの2泊は、登山前と下山後にあてがわなくてはなりません。行きは旭川空港、帰りは帯広空港を利用し、ぎりぎりの日程で組まれた4泊5日ということが何となく見えてきますね。

トムラウシ山自体がそんなに楽ではない山であるのに加え、疲労のたまる4日目に、悪天候の中、トムラウシ山に登って下るという状況になったわけです。ヒサゴ沼の避難小屋にとどまろうにも、予備日もなく、おそらく食料も十分ではなかったでしょうし、午後から晴れるという予報を信じて前進するしかなかった、のでしょうか。でも北海道の標高2140mは、本州で言えば北アルプスの3000m級の山を、悪天候の中、前進することと変わりありません。「四つんばいで岩にしがみついていた」ほどの強風だったのですから。

○ガイドが3人もいて、うち2人が初めてのコースだったこと。
○北海道の山を4泊5日という長丁場なのに軽装の人がいたこと。
○テントもツェルトも持たずに北海道の山を縦走するツアーであること。
○多くが中高年、というより体力に不安のある高齢者であること。
○参加者が初めて知り合った即席パーティであること。
○登山経験や力量にどれくらいの差があるかチェックされていなかったこと。
○何かアクシデントが起きてもエスケープルートがないこと。
○行程に予備日が設けられていないこと。

これだけ懸念すべき要因が出そろった時点で、このツアーは危険だ、ということは誰が見ても何となく想像がつきます。おまけに、助かった人の中には、観光旅行のつもりで参加したと言った人もいたとか。企画した旅行会社が、どの程度、山岳ツアーの経験があったのか知らないけれど、これでは無理があったといわれても仕方がないかもしれませんね。

ガイドが北海道の人だったかどうか、これも疑問。そうではなかったのかもしれません。でなければ、北海道の山で悪天候を承知で強行することがどんな結果を招くか、専門家であるはずの3人が3人とも判断を誤るなどということがありえるでしょうか。
携帯電話は通じていたとのことなので、ガイドたちはこれからどうするか、旅行会社と連絡を取り合っていたはずです。
帰りの飛行機も決まっているし、ツアーをきちんと最後まで成功させないと、あとで精算だの何だの面倒なことが起きるのは想像に難くありません。それは仕方がないことですが、人の命には代えられません。

わたしは単独行がほとんどなので、登山ツアーに参加したことはありませんが、集団で山に登るということの意味を改めて考えさせられました。よく単独行は危険だ(現に今回の遭難事故では美瑛でも単独行の方が亡くなっています)と言われますが、互いをよく知らない集団での登山には、もし何かあった場合、これほどまでに危険をはらんでいるということがわかりました。

凍えるような寒さの中で低体温症で亡くなった方々、好きなはずの山でこのような亡くなり方をされ、さぞ無念だったと思います。改めてご冥福をお祈りします。

今日の毎日新聞の記事です。

北海道・大雪山系遭難:「悪天候で無謀」 

生存者、ガイドに怒り


遭難時の様子を話す戸田新介さん=愛知県清須市で19日、福島祥撮影 大雪山系のトムラウシ山(2141メートル)で旅行会社「アミューズトラベル」(東京都千代田区)が企画した登山ツアー客ら8人が遭難死した事故で、ツアーに参加し、自力で下山した愛知県清須市土器野、戸田新介さん(65)が19日、毎日新聞の取材に応じ、遭難時の様子について証言した。「悪天候の中の出発は『見切り発車』で、無謀だった」とガイドの対応に怒りをにじませた。【福島祥】

 遭難当日の16日朝は雨が降っていた。出発予定(午前5時)直前にガイドがツアー客に言った。「5時に予定していたが、あと30分様子を見ます」。出発することは既に決まっていた。

 ガイドら3人と客15人が歩みを進める中、天候は悪化。北沼手前で小川を渡り振り返ると、流れが激しさを増し、波を打った。戸田さんは「帰れんな」と直感したという。午前10時半ごろ、北沼の辺りで女性1人が動けなくなった。女性にガイドが付き添った。他の客は別のガイドの指示で、約1時間半、近くの吹きさらしの場所にしゃがんで待機したという。

 じっととどまる時間が体力を奪っていったという。戸田さんはガイドに声を荒らげた。「何をやっとんだ。これは遭難だ。救援を依頼しろ。指示を出せ。じっとしとってはいかん」。ガイドは「先に行ける人は出発します」と先を目指した。

 ところが出発後すぐに別の客も動けなくなった。その後、ガイド1人と客10人が一団となって下山することになったが、出発後にばらばらになった。途中、戸田さんは別の客と協力し、歩けなくなった女性客を支えながら歩いた。「女性は転んだら自分では起きあがれない状態になっていた」という。女性を何度も抱き起こしながら声を掛けた。「こんなところで死にたくないだろ」。女性はうなずいていたが、生還することはできなかった。

 戸田さんは約35年の登山歴。戸田さんは「自分が見たことを知らせる義務がある」と取材に応じた。「遭難当日、私たちは『こういう危険があるけど行きますか?』と、判断する機会を与えられなかったのはおかしいと思う。なぜこんなことが起きたのか、何があったのかを知りたい」と語気を強めた。


………………………………………………………………………

午前5時の出発を30分ずらし、5時30分に出発しました。
行程の途中で悪天候に見舞われたのではなく、最初から悪天候だったわけです。
その時点で、ガイドたちは、15人の参加者の防寒具のチェックはできたはず。亡くなられた方の中には、ヤッケを着ておらず、手持ちの上着を身体に巻きつけただけの方もいたという記事もありました。ヤッケも着ないで暴風雨の中を出発したというのでしょうか。

体力に自信のない人、防寒が十分でない人は、ガイドの一人が付き添ってヒサゴ沼避難小屋にとどまり、天候の回復を待つという選択肢はあったのではないでしょうか。スタミナに自信のあるツワモノだけなら、何とか生還できたように思えます。低体温症で倒れた方を気遣ううちに、「じっととどまる時間が体力を奪っていき」、ミイラ取りがミイラになってしまう状況だったのでしょう。吹きさらしの場所に1時間半も立たされていたなんて、せめてツェルトがあれば、体温の著しい低下は多少とも防げたのではないでしょうか。

前述のように、トムラウシ山の登山道はかなり長く、いくら下山とはいえ、4時間近くかかる。山中2泊の行程の最後、しかも悪天候とあっては、あまりにしんどい。樹林帯に入ってしまえば雨風は収まるので楽にはなるだろうけれど、それでも、無事に下山するだけでせいいっぱい、登山の楽しみもへったくれもあったものではありません。下山してからトムラウシ温泉にドブンと浸かるのが唯一の心の支えというルートですね。

このツアーでは、どうも、悪天候になった際の対策があまり練られていなかったように思えます。長い行程なら天候がずっともつとは限らないわけで、必ず、停滞日やエスケープルートも想定した計画にするのが常識のはずです。このルートの場合、ヒサゴ沼避難小屋からのエスケープルートがなく、ひとたび悪天候になると山中に閉じ込められてしまう、そういう危険をはらんだコースであることは、普通に考えれば想定できることです。本州の山だって、似たような条件の山であれば、かなり慎重になります。でも、そこが山岳会や単独行と異なるツアー登山の最たるところで、即席パーティでリーダーがいない(ガイドがリーダーなの?)、登山者はあくまで「お客様」なのですね。こちらはカネを払っているわけだから、旅行会社が万事きちんと考えてくれているんだろう、という他力本願的な気持ちが出てきて、自身でリスクをマネジメントする気持ちが弱くなってしまうのでしょうか。
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ジャンル : 旅行

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古民家での晴耕雨読な暮らしに憧れる軟弱な熊谷都民。

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