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被爆国アメリカ

「原発ジプシー」に続き,またも学生時代に読んだ古い本の紹介です。
押入の奥にそっと眠っていたのを,無理やり起こしてしまいました(笑)。
原題は「Killing Our Own」。
昭和58年に早川書房から刊行された日本語版の邦題は「被爆国アメリカ」。
原題よりもインパクトがありますね。

killingourown.jpg

今になって読み返すとは正直,思っていなかったのですが,捨てないでよかったと思いました。
福島第一原発の重大事故を見ていると,その原点やルーツがどこにあったか,そしてそれがどのように変遷して福島第一の事故につながっているか,よくわかります。

本書はアメリカ人の被爆の実態と,それをことごとく隠蔽しようとする政府や御用学者,原子力推進派の実態を,あますところなく暴いています。徹底して科学的に,被爆の実態を実証しようとしています。
原発反対という政治的なプロパガンダだけで書かれたものではないと思います。
だから,説得力があるんですね。

最初は,ヒロシマ・ナガサキで被爆した米兵の話から始まります。
原爆が落とされた直後,焼け野原となった爆心地に,若き米兵が送り込まれました。
原爆投下後の「後片付け」を命じられたという彼らは,爆心地で寝泊りし.放射線を含んだ貯水槽の水を飲み,数週間の滞在の後,帰国します。彼らは原爆については何も知らされず,現地に入って初めて,これは普通の爆弾とは違うということに気づいたくらいです。
彼らの苦しみは,帰国の船旅の途中から始まりました。髪がバサッと抜け始め,原因不明の痛みが続き,帰国後はやがて多発性骨髄腫などを発症し,仕事もできなくなり,医者からは原因不明の病気といわれ続け,地獄のような苦しみを味わうことになります。

しかし,彼らに補償をすべき「復員軍人局」は,元軍人がいくら被害を訴えても,放射能との因果関係を一切認めようとしませんでした。政府・御用学者・医者・原子力関係者がタッグを組み,事実のもみ消しに躍起になっていたのです。

元米兵のコッポラさんは,のちに日本を訪れ,自分たちも被爆者なんだと講演したそうです。

米国政府は当時、原爆は人口の少ない地方で投下すべきという方針だったのですが、「原爆の影響力を科学的に検証するため、人口が比較的多く、空爆の影響を受けていない中規模の都市に投下するのが望ましい」ということで、いくつかの候補の中から広島・長崎が選ばれた。
この手の話はNHKなどの番組でも耳にしたことがありますね。

わからないのは、米軍がなぜ、若き同胞を原爆投下直後の爆心地に送り込んだのか、ということです。彼らが爆心地で、それほど重要な任務に携わったとは、本書を読む限り、伝わってきません。それどころか、帰国早々に除隊させています。元兵士の言葉を借りれば「厄介払い」にされたということですね。原爆の影響力を調べるのであれば研究者が現地入りすればいいわけで、放射能を何も知らない兵士たちはモルモットにされたとしか思えません。恐ろしい話です。

もっとも,当時の米国は放射能の真の恐ろしさをまだわかっていなかったみたいです。 1944年に世界最初の原爆を開発したマンハッタン・プロジェクトに関ったJ・ロバート・オッペンハイマー博士は,「強い放射性のナトリウム24溶液を飲み,驚く大学院生を前に,ガイガーカウンターに自分の手をかざして,針が振り切ってしまうのを見せた」という話とか、原爆開発に従事していたロス・アラモス研究所で臨界事故が起きて研究員が丸焦げになった話とか、とにかく放射能の危険性については無頓着だったらしい。
だからこそ,ヒロシマ・ナガサキの「実験」が必要だった,のでしょうか。

その後,1946年のビキニ環礁をはじめ,数々の核実験を実施します。そのたびに,さまざまな環境影響を訴える住民と,放射能との因果関係を徹底的に否定する政府・御用学者・原子力推進派という構図が,これでもかと続きます。
本書を紹介した新聞が,本書を「放射能災害のカタログ」と称していますが,そういう意味では貴重な資料だと思います。図書館で探して読んでみてください。


そして,本書の最後はスリーマイルアイランド(TMI)原発の事故の話でしめくくられます。

1960年代半ばにメトロポリタン・エジソン電力会社が,フィラデルフィアの西方約200マイルのスリーマイル島に建設を決定し,1974年には運転準備が整いました。このスリーマイル原発は,事故ばかりが紹介されていますが,事故を起こす前から周辺に大きな影響を与えていたことが書かれています。放射能の影響はたいてい,動植物から始まります。猫の死産や奇形,生まれつき目が見えず骨が異常に柔らかい牛,卵を抱かないガチョウ,脳や肝臓に腫瘍のある牛,などなど。
当時,米国のあちこちの原発で,利益重視に起因する不適切な管理やいい加減な施工による事故が頻発していたにもかかわらず,御用学者たちの擁護もあってもみ消されていました。それが,1979年のスリーマイル原発の事故で一気に表面化することになります。

このスリーマイルの事故は,給水ポンプが故障してコントロール室の警報ランプが点灯したが,運転員が判断を誤った結果,炉心部から水がなくなり,温度も圧力も上昇し始めた。圧力を逃がす弁が開いたまま閉まらず,放射能を帯びた水が原子炉格納建屋の床にどっとあふれた。緊急炉心冷却系が作動したが,再び運転員が判断を誤り,冷却系を閉じてしまった。ポンプから放射能を含んだ水が噴出して建屋を水浸しにし,大量の蒸気が噴出した。放射能が格納容器から漏れ,放射能を含んだ水が近くの川に流れ込んだ。炉心に大量の水素の泡が発生して爆発の危険に晒され,「測り知れない量の放射線量」がペンシルベニア州中部に流れ出ていった,というものです。

今回の福島第一と,人災と天災の差はあれ,似た部分がありますね。


結局,スリーマイル原発の事故でも,政府や電力会社,原子力推進派は,漏れた放射能の量を極力少なくしようと「工作」しました。この原発には,放射能の漏れを測定する装置が4段階で設けられていたにもかかわらず,本当のところ,一体どれだけの放射能が流出したのか,明らかにされていないそうです。

そして,事故前からすでに発生していた周辺地域での動植物への影響は,事故による放射能流出でさらに悪化し,そして人間においても乳児の死亡率が明らかに上がっているにもかかわらず,一方で,統計的な詭弁を駆使して,放射能の影響を否定しようとする御用学者の存在。

福島第一は,スリーマイルのレベル5を超え,レベル6に指定されました。

この本を読んでしまうと,政府や電力会社の言うことは本当に正しいのか,疑わしくなってきます。当初から米国が福島第一の支援に熱心だったのは,背景に米国の原子力利権が絡んでいるから,というのは考えすぎかな。福島の原発がにっちもさっちもいかなくなって,国内の反原発の動きに火がつくのを恐れ,早期に沈静化させたいという思いは,間違いなくあるでしょう。


通読して,いろいろ感じたことはありますが。

日本は「唯一の被爆国」ではないということ。
仮に「唯一の被爆国」を自称するならば,核の恐ろしさを世界で唯一知る国であるならば,「核」の平和利用にもっと真剣に取り組むべきではなかったか。「世界で唯一の被爆国が平和利用のために原発を持つ」というわかりづらいロジックに説得力を与えるために,やらなければいけないことはいろいろあったのではないか。。。

福島第一では燃料棒が破損して,放射能が漏れ出しています。
スリーマイルの教訓は,データを隠蔽,改ざんしないということです。
正しいデータを出せば,それに応じた対策をすればよいと思います。

本書を読む限り,たいていの被爆は「知らないうちに」被爆しています。
事前に知っていれば,ある程度までなら,防御ができる。

いずれにしても,「被爆を二度も経験した世界でも例のない国」になってしまわないよう,何とか早く収まってほしいものです。

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