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福島第一原発の吉田元所長を悼んで

東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎前所長が、ガンのため亡くなられた。
闘病中とはうかがっていたが、まさかこんなに早くお亡くなりになるとは。
大変悲しく、痛ましい。

日本という国を背負い、日本の国民を背負い、文字通り「盾」となって、未曽有の原発事故に立ち向かった吉田さん。
本店のお偉方の無理難題に正面から反論し、自らの決断を貫いた吉田さん。
かっこよくて、男らしかったですね。

そして、吉田さんがいたから、多くの原発作業員たちは決死の覚悟で、放射能が漏れ出した原子炉に向かっていった、と聞く。
吉田さんがいなかったら、原子炉に行けという命令を誰が下したかわからないけれど、作業員の方たちが、果たして、その危険な命令に従ったかどうか、疑わしい。
吉田さんがいたから、作業員の方たちには、俺たちが日本を守るんだ、という意識が芽生えたのではないか。

多くの方たちが、そういう想いを抱いているはず。
ツイッターには、国葬にすべきとの書き込みもあったとか。

私たちは、吉田さんを美化しすぎているだろうか?
彼は、与えられた職責を全力で果たす以上に、何かとても重要なものを心の中にもっていた。
それは、多くの日本人が、心の中に、漠然とした美学として抱いているもの。
それを体現したからこそ、多くの国民の共感が集まるのだろう。
一生懸命やってきたのは、何も吉田さんだけではない。いろいろな立場の皆さんが、与えられた立場で全力を尽くしてきた。
しかし、大多数の国民は、その過酷な現場に足を踏み入れることはできない。
固唾をのんで見守るしかない。
この埋めようがない距離感が、吉田さんをして、次第に象徴的な存在へと昇華させていったのかもしれない。

いずれにしても、あまりに早すぎる死であった。
早く元気になり、家族との当たり前の生活を取り戻してほしかったのだが。

そして。

中身はまったく違うが、同じような事が、つい最近もあった。

兵庫県尼崎市で、不可解な事件を引き起こした角田三枝子。
警察に逮捕され、これから事件の真相を解明すべき時に、こともあろうに留置場で自殺した。
数々の不可解な謎を秘めた事件の全容は、闇に葬られつつある。

今度の原発事故はどうだろう。
現場の最終責任者である元所長という立場でなければ知りえなかったこと、考えられなかったこと、決断の裏にあった科学的な根拠と確信などなど。
それらは、吉田さんの死で、うやむやになってしまうのだろうか。

原発事故の収束に向けて必死の作業が続く福島第一原発。
チェルノブイリと並んで人類史上最悪とも言われる原発事故を起こした以上、当事者である国や東電は、できる限り詳細かつ透明な報告書をまとめあげることが、国際社会に対する大きな責任である。
そして、吉田さんは、まさに、その最重要人物であった。
事故の経過を包み隠さずつ、まびらかにすることは、後世の世代に対する貢献でもある。
東電のメンツのために、脚色された報告書がまとめられたら、原発事故で苦しむ人たちは本当に浮かばれない。
悲惨な事故から得られた貴重なデータや経験をできる限りオープンにしなきゃいけない。

周囲にいた方たちが、何とか吉田さんの思い、考えを代弁してあげてほしい。
だけど、原発事故の数週間後に東京に一時帰省した際、どこかのデパートで値札を付け替えて万引きする事件を起こしたのは、当時の副所長だったっけ。
正直、耳を疑った。
東電の原発は、こんな人が幹部でまかり通っていたわけだ。
悲しいが、吉田さんがいかにまっとうな人だったか、これだけでも推察できる。
貴重な方を失ったという想いは、ますます募るばかり。

ご冥福をお祈りいたします。合掌
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