スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

舟と港のある風景

library0013.jpg

まず、タイトルにそそられました。そして、表紙の写真。さらに、サブタイトルとして付けられた「日本の漁村・あるく みる きく」。旅好きとして、これは読まずにはいられません。昨年の夏に出版されていたようですが、つい最近、朝日新聞での広告で知りました。地味な本のはずですが、売れているのでしょう、すでに第二版です。それだけ、都会人は漁村へのノスタルジーを抱いているということの裏返しなのかも。
著者の森本孝さんは、フリーライターでも研究者でもカメラマンでもありません。本をパラパラめくった時、いったい何者?という思いが脳裏をよぎりました。今までの常識的なジャンルに分類できないような、従来なかったタイプの著作に思えたのです。

宮本常一、と言ってももう若い人(笑)は知らない人のほうが多いかもしれませんが、日本の民俗学の第一人者であった大先生とでも言えばいいでしょうか。著者は、その宮本先生の書生のような仕事をしていて、先生の指導で日本の漁村を調査してきました。いわゆるフィールドワークの書です。東北、沖縄、奥丹後、瀬戸内と、実に多くの漁村を旅しては、漁船の構造、人々の暮らし、近代化の中での生活の変化などについて、人々との語り合いの中から貴重な証言を導き出し、断片的な話を織り上げるように組み立てていく。特に伝統的な漁船の構造についてはめちゃくちゃ詳しく、地域による特性や製法などまで、聞きだして整理しています。
本書は、彼が昭和40~50年代にかけて旅した時代のものです。この時期を境に、日本の漁船は伝統的な木船から動力付のFRP船に急速に変化してしまいました。今はほとんど見られなくなってしまった貴重な歴史遺産を伝えています。

個人的には、テーマはやはり「風景」になってしまいます。漁村の風景は、FRP船舶の普及にとどまらず、防災対策としてのテトラポットや防波堤の整備で、大きく様変わりしました。京都の伊根など観光地化したところは別としても、かつては日本海どこにでもみられたという「船屋」は今や数えるくらいになってしまったようです。「風景」というコトバに釣られて読み始めたのですが、あまり純粋な意味での「風景」に言及してはいません。ベースは民俗学的アプローチであって、景観ではないからです。しかし、ひとつの重要なことに気がつきました。それは、漁を終えて港に帰ってくる漁師と、彼を岸壁で待ち続けて獲物を受け取る漁師の妻の笑顔が、船と港のある風景の中心になっているということ。

漁業の厳しい生活が単なるノスタルジックなものではないことは、言葉の上では皆一応知っているつもりです。でも、都会に生きているからこそ、漁村はありのままの漁村の姿でい続けてほしいと願うわけであって。それが勝手な思いであることは百も承知の上で、ですけれど。

風景は生活のなかにある。
そんなことを気づかせてくれる貴重な一冊です。

願わくば、自分も彼のような旅がしてみたいと願います。イチゲンの客として、これだけの話を聞きだせるというのは、その研究心もさることながら、おそらく著者の人柄がなせる技なのでしょう。
スポンサーサイト

テーマ : レトロを巡る旅
ジャンル : 旅行

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリー
プロフィール

fabio777

Author:fabio777
古民家での晴耕雨読な暮らしに憧れる軟弱な熊谷都民。

月別アーカイブ
ブログ検索
FC2カウンター
原発のない世の中へ!
【署名のお願い】自然エネルギー100%と原発の段階的廃止を実現するため「エネルギー基本計画」を変えよう!
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
リンク
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。