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江戸を歩く

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 千住と鈴が森。
 この2つの地名を聞いて、東京人なら、ピーンと来るものがあるでしょう。そう、ともに江戸時代、刑場だったことで知られている土地ですね。
 本書は、世界的な巨大都市、東京の中に「江戸」の名残を求めて散策するものですが、その散策は、千住に始まり鈴が森に終わる構成になっています。江戸は周到に計画された都市ではあったけれど、決して閉じた世界ではなかったそうです。
 「吉原の外側に千住回向院があり、品川遊里の外側に鈴が森の刑場があった。東京に暮らすとは、そうして東京で生きていった人々に出会うことである。死者と再会することである」。江戸に対する著者の感性は、とても鋭敏です。

 着物が似合う田中優子さん、日曜日の午前中のバラエティ番組のレギュラー出演者でもあります。着物姿で両国橋を颯爽と歩く写真も登場します。昔と全然変わっていません。私、学生の頃に先生の講義を受けたことがあるのですよ~とか言っても、聞こえないでしょうね。そして、千住に始まり鈴が森に終わるという物語の構成も、いかにも著者らしいように思います。
 写真家の石山貴美子さんとペアを組み、江戸の名残を求めて、感性の赴くままに東京の街を歩く。写真が印象深くて、向島の芸者さんの笑顔。処刑された者たちの無数の魂を弔い続けてきた千住小塚原の回向院の延命地蔵。けばけばしいソープランド街の傍らで吉原遊郭の面影をかすかに残すお歯黒どぶ。待乳山聖天のエロティックな二股大根が描かれた提灯。花見客が場所取りを繰り広げる小伝馬町の刑場跡。。。あとは本書を買い求めて、存分に鑑賞していただければと思います。

 ペテルスブルグとレニングラード、コンスタンチノープルとイスタンブール。2つの名前を持つ都市は、その複雑な変遷もさることながら、同一の都市の内部に互いに対立しあうアンビバレンツな要素が互いに同居している印象を受けますね。日本では、江戸と東京、大阪と難波。。。名前が2つ存在するのは、為政者の意図とは別に、やはりそれなりの必然性があったのだと考えるほうが自然ではないだろうか、などと思ったり。
 関東大震災や東京大空襲、高度経済成長とモータリゼーョン、バブルによる地上げなど、この都市は、さまざまな試練を受けながら、その外観を大きく変貌させてきました。江戸から東京と名前を変えることで、歴史をリセットし、まったく別の都市に転換したようにも見えます。京都ならそうはいかなかったはず。いまや江戸と東京は、遠く隔たってしまったのでしょうか。そうではないでしょう。江戸時代、火事は日常茶飯の出来事でした。宵越しの金は持たねえ、燃えたら、また作ればいいさ。人々の精神構造も、都市全体のあり方も、すべてがメタボリックだったのです。明と暗、陽と陰とを巧妙に同居させつつ、常に変化し続けてきた世界こそ、江戸的であり、同時に東京的なのでしょう。江戸と東京は対立軸にあるどころか、同質なのかもしれません。
 そんなことより、本書を持って、江戸東京の街をめぐる「小さな旅」に出かけてみましょう。江戸の「気」のようなものはそこかしこに感じることが出来るはずですから。

田中優子 著
集英社文庫ヴィジュアル版
定価 1,000円
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テーマ : レトロを巡る旅
ジャンル : 旅行

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古民家での晴耕雨読な暮らしに憧れる軟弱な熊谷都民。

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