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パレオマニア-大英博物館からの13の旅

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 一週間以上かけてちびちび読んできた。どちらかというと速読派の自分にとって、これほどの遅読は珍しいのではないかなと思う。読み終わりたくなかった、この本の主人公である「男」の感傷世界にどっぷりと浸かっていたかった。。。読み終わった時、不思議な満足感に包まれた。で、出てきた結論。

「もし、旅に快楽があるとしたら、こういう旅を言うのだろうな」

 世界中の名品を集めた大英博物館。古代の土の中から出てきた収蔵品の数々と対面し、魅せられ、その発するメッセージにじっと耳を傾ける。

(ここでは仮に、「男」が魅惑された収蔵物を「彼」と呼ぶことにしてみよう)。

感じるものがあれば、「男」は地球の反対側だろうが砂漠の中だろうが、万難を排してどこへでも足を運んでいく。エジプト、メソポタミア、ギリシャ、イラク、トルコ、カナダ、メキシコ、カンボジア、オーストラリア、韓国、そして本家本元のイギリス。そして、目の前に広がる光景に見入りながら、歴史のはるか彼方、「彼」が生まれ、躍動し、埋められ、そして静かに眠りについてからの、気の遠くなるような時間に思いを馳せる。

 本書のタイトルの「パレオマニア」は「古代妄想狂」と訳されているが、どうやら「誇大妄想狂」にもひっかけているらしく、「男」は持てる知識と感覚を駆使して、妄想を駆け巡らせる。

「彼」が自分から言葉を発しない以上、「彼」とのコミュニケーションは、「男」が想像力を駆使するしかない。「男」は「彼」をあたかも仲の良い友達のように、あたたかいまなざしで見つめ、そして問いかける。

本書は、「男」と「彼」との間の、時空を超えた対話の記録である。「彼」の生の声を聞くには、「彼」のいた土地にまで行くしかないではないか。。。それは決して、美しい写真やグーグルアースのような便利なツールで代用できるものではない。

 「男」は言うまでもなく著者の一人称を三人称的に設定したもので、著者はギリシャ、沖縄などいろいろなところに住み、今はフランス住まい。旅の天才なのかな、とも思う。

日本人は概して旅行好きだと思うけれど、でも、いったいどれだけの人が「男」のような「快楽の旅」をしているだろうか。でも、「男」が提示した旅のかたちは、決して時間とお金に恵まれた人だけでなく、身のまわりの小さな旅からだって実践できることかもしれない。
私たちが住んでいるすぐ近くにだって、私たちを古代へといざなうタイムカプセルの入口がそっと空いていて、私たちを待っているのかもしれない。気づくか気づかないかは人それぞれ。

 思うがままに想像力を働かせ、感覚を研ぎ澄まし、土地が発するメッセージに耳を傾け、思考を組み立てていく。その結果、見えてくるものは何だろう。科学としての歴史学は、古代の出来事を実証的に分析して「史実」を明らかにできるかもしれない。でも、人間が築き上げてきた文明とは、いったい何だったのかという根源的な問いには、たぶん答えてくれないような気がしてくる。

そして、「男」がいろいろな文明のルーツを訪れて感じたこと。
「たとえ大陸が違い、他の文明の影響を受けなかったにしても、人間が築く文明のかたちはそんなに違わない」
「何千年前の人間も今の人間も、美的感覚という面では大して違わない」

進歩って、一体何なんだろう。
ますますわからなくなってきた。


池澤夏樹 著
集英社インターナショナル

月刊「PLAYBOY」での連載を単行本化したもの。
2004年3月初版 現在第5刷
やはり売れているのです。

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テーマ : レトロを巡る旅
ジャンル : 旅行

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古民家での晴耕雨読な暮らしに憧れる軟弱な熊谷都民。

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